表示が遅い、契約中のサーバーで新しいPHPが選べない、制作会社の契約から自社の契約に切り替えたい。こうした理由でWordPressサイトを別のサーバーへ移す(引っ越す)ことになったものの、何から始めればよいのか、サイトやメールが止まらないかが分からず、手を付けられない担当者は少なくありません。
WordPressのサーバー移転は、旧サーバーの契約を残したまま新しいサーバーにファイルとデータベースを複製し、DNSを切り替える前に新サーバー上で表示・フォーム・メールを確かめ、切り替えが行き渡ってから旧サーバーを解約する順番で進めれば、サイトとメールを止めずに移せます。
この記事では、サーバー会社に依存しない一般的な手順として、移すものの整理、事前の準備、バックアップからDNSの切り替えまでの流れ、メールを止めない段取り、よくある失敗例と防ぎ方を、発注する側の立場で解説します。ドメインの管理会社を変える「移管」は別の手続きなので、ドメイン移管の手順で扱います。
サーバー移転で移すもの・移し忘れやすいもの
WordPressのサーバー移転で移すのは、ファイル、データベース、設定ファイル、メール、DNSの設定、SSL証明書、PHPなどの環境の7つで、サイトのデータだけを移してもサイトとメールは正しく動きません。
| 移すもの | 中身 | 移し方の例 | 移し忘れると起きること |
| WordPressのファイル | 本体、wp-content(テーマ・プラグイン・画像)、wp-config.php | FTPでダウンロードしてアップロード、移行用の機能やプラグイン | 画像が表示されない、デザインが崩れる |
| データベース | 投稿・固定ページ、設定、ユーザー | phpMyAdminなどでエクスポートしてインポート | 記事や設定が空になる |
| 設定ファイル(.htaccessなど) | リダイレクト、アクセス制限、パーマリンクの設定 | 中身を確認し、新サーバーで同じ動きになるように置く | 旧URLからの転送や、記事のURLが効かなくなる |
| メール | メールアカウント、転送・自動返信の設定、過去のメール | 新サーバーで同じアドレスを作り、過去のメールは手元に保存する | 切り替え後にメールが届かない、過去のメールが消える |
| DNSの設定 | ネームサーバー、Aレコード(サイト)、MXレコード(メール)、TXTレコード(SPFや各種サービスの認証) | 新しいDNSに同じ内容を登録してから切り替える | サイトとメールの片方だけが止まる |
| SSL証明書 | httpsで表示するための証明書 | 新サーバーで発行・設定する | ブラウザーに警告が表示される |
| PHPなどの環境 | PHPのバージョン、php.iniの設定、データベースのバージョン | 旧サーバーと同じ系列のPHPにそろえる | 画面が真っ白になる、エラーが表示される |
一方、ドメイン名やページのURL、Googleアナリティクス(GA4)の設定は、サーバーを移しても変わりません。ただし、Search Consoleの所有権をDNSのTXTレコードやサイトに置いたファイルで確認している場合は、そのレコードやファイルも新しい環境に移します。Googleのホスティングの変更に関するガイドでも、移転後も所有権の確認が続くようにしておくことが挙げられています。
移転の前に確認すること
作業に入る前に、旧サーバーの契約期限、新サーバーの環境、DNSを管理している場所、メールの使い方の4点を確かめておくと、切り替えの日に慌てずに済みます。
| 確認すること | 理由 | 確認のしかた |
| 旧サーバーの契約期限 | 切り替えが行き渡るまで、新旧のサーバーを並行して動かすため | 更新月を確認し、期限まで余裕(目安として1か月以上)がある時期に作業する |
| 新サーバーのPHP・データベースのバージョン | 旧サーバーと大きく違うと、移転後にエラーが出やすい | WordPressの「ツール」→「サイトヘルス」→「情報」で、今のPHPとデータベースのバージョンを控える |
| DNSを管理している場所 | 切り替えの方法(ネームサーバーを変えるか、レコードを書き換えるか)が決まる | ドメインの管理画面で、ネームサーバーがどこを向いているかを見る |
| メールの使い方 | 過去のメールの保存方法と、切り替え中の受信方法が変わる | 使っているアドレスの一覧、メールソフトの受信方式(POP・IMAP)、転送設定を控える |
| サイトの容量と特殊な機能 | 複製の方法を選ぶため | 画像とデータベースの容量、マルチサイト、会員・予約機能、外部サービスとの連携の有無 |
| 作業日と社内の連絡 | 複製から切り替えまでの間は、記事の更新を止める必要がある | 更新を止める期間を社内に伝え、問い合わせが少ない日を選ぶ |
移転とPHPの系列の更新(例:8.2から8.4へ)は、同じ日に行わないことをお勧めします。両方を一度に変えると、不具合が出たときに原因が移転なのかPHPなのかを切り分けにくくなります。まず旧サーバーと同じ系列のPHPで移転を終え、落ち着いてからPHPを更新します。
なお、同じサーバー会社の中でプランや別のサービスに替える場合は、解約して契約し直すのではなく、そのサーバー会社のプラン変更・サービス変更の手続きで済む場合があります(例:エックスサーバーからXServerビジネスへは、公式の「XServerビジネスへの変更」で契約期間とデータを引き継げます)。まず契約中のサーバー会社の案内を確認してください。
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WordPressのサーバー移転の手順
手順は、バックアップ、新サーバーの準備、データの複製、新サーバー上での確認、DNSの切り替え、切り替え後の確認、旧サーバーの解約の7段階で、DNSを切り替えるまでは今のサイトがそのまま表示され続けます。
- バックアップを取る:旧サーバーのWordPressのファイル一式とデータベースを保存し、PHPのバージョンや.htaccessの中身も控えます。WordPressの公式ドキュメントも、サーバーを移すときは最初にファイルとデータベースの両方をバックアップするよう案内しています。
- 新サーバーを準備する:新サーバーにドメインを追加し、データベースを作り、PHPを旧サーバーと同じ系列に設定します。
- データを複製する:ファイルとデータベースを新サーバーに移します。データベース名やユーザー名が変わる場合は、wp-config.phpの接続情報を書き換えます。
- 新サーバーで確認する:DNSを切り替える前に、新サーバー上のサイトを表示して確かめます(次の項で説明します)。あわせて、メールアカウントを作り、SSLの準備をします。
- DNSを切り替える:ネームサーバー、またはAレコード・MXレコードを新サーバーに向けます。
- 切り替え後に確認する:httpsでの表示、問い合わせフォームの送信、メールの送受信、管理画面へのログインを確かめ、Search Consoleでエラーが増えていないかを見ます。
- 旧サーバーを解約する:一定期間(例:2週間)問題がないことを確かめ、旧サーバーに残ったデータとメールを最後に保存してから解約します。
データを複製する3つの方法
複製の方法は、サイトの容量と構成で選びます。
| 方法 | 向いているケース | 注意点 |
| サーバー会社の移行機能 | 一般的な構成のWordPressで、容量が大きくないサイト | 対応するWordPress・PHPのバージョン、容量の上限、移らないデータ(.htaccessなど)が決まっている |
| 移行用のプラグイン | 管理画面に入れて、容量が中程度までのサイト | 無料版では容量に上限があるものがある。移転後は不要になったプラグインを削除する |
| 手作業(FTPとphpMyAdmin) | 容量が大きい、独自の改修が多い、特殊な構成のサイト | データベースの文字コード、wp-config.phpの接続情報、ファイルの権限を合わせる必要がある |
DNSを切り替える前に新サーバーで確かめる
DNSを切り替える前の確認は、パソコンのhostsファイルを編集して、自分のパソコンからだけ新サーバーのサイトを表示させる方法が向いています。サーバー会社が確認用のURLを発行している場合もありますが、WordPressは設定されたサイトアドレスでリンクを組み立てるため、別のURLではページの移動や画像が正しく確認できないことがあります(エックスサーバーのマニュアルでも、WordPressの場合はhostsファイルでの確認を案内しています)。
確かめるのは、トップページと主要なページの表示、画像、問い合わせフォームの送信、管理画面へのログインと投稿の保存、存在しないURLを開いたときの表示です。テストのために「設定」→「表示設定」の「検索エンジンがサイトをインデックスしないようにする」をオンにした場合は、公開前に忘れずに戻します。
DNSを切り替える
DNSの切り替えには、ネームサーバーを新しいサーバー会社のものに変える方法と、今のDNSを使ったまま、サイトのAレコード(必要ならメールのMXレコード)だけを書き換える方法があります。ネームサーバーを変える場合は、新しいDNSに、旧DNSにあったレコード(メール、SPF・DKIM、外部サービスの認証用のTXTなど)を先に登録しておきます。反映には数時間から1日程度かかることがあり、その間は新旧のサーバーにアクセスが分かれます。
レコードを書き換える方法では、1週間ほど前までにTTL(DNSの情報を保存しておく時間)を短くしておくと、切り替えが早く行き渡ります(Googleのガイドでも、少なくとも1週間前に下げておくことを勧めています)。SSL証明書は、DNSを切り替えた後でないと新サーバーで発行できない場合があるため、切り替え直後に警告が出ないよう、事前に設定できるか、切り替え後すぐに発行できるかを確認しておきます。
移転と同時にドメイン名やURLも変える場合は、WordPressのサイトアドレスの変更に加えて、データベースに残る旧URLの置き換えと、旧URLからの301リダイレクトが必要です。WordPressの公式ドキュメントは、データベース全体を単純に置き換えると、文字数を記録して保存している設定(シリアライズされたデータ)が壊れることがあるとして、専用のプラグインやWP-CLIの置換機能を使うよう案内しています。リダイレクトの進め方はURL変更とリダイレクトの手順で解説しています。
メールを止めない段取り
メールを止めないためには、新サーバーに同じメールアドレスを先に作り、DNSの切り替えから反映が終わるまでの間は、旧サーバーと新サーバーの両方で受信できる状態にしておきます。
| 時期 | やること |
| 切り替えの前 | 新サーバーに同じメールアドレスを作る。メールソフトには旧サーバーの設定を残したまま、新サーバーのアカウントを追加する。転送設定と自動返信も作り直す。必要な過去のメールを手元に保存する |
| 切り替えの当日 | 社外のアドレスとの間で送受信を試す。問い合わせフォームの通知メールが届くかを試す |
| 切り替え後の数日 | 旧サーバーにも届いていないかを確認する(反映の途中は、新旧どちらに届くか分からない) |
| 旧サーバーの解約前 | 旧サーバーに残ったメールを取り込み、旧サーバーのアカウントをメールソフトから外す |
過去に受信したメールは、サーバーを移しても自動では引き継がれないことがあります。エックスサーバーのよくある質問でも、サーバー間で過去の受信メールは引き継げないため、メールソフトなどで手元に保存するよう案内しています。IMAPでサーバー上にメールを残して使っている場合は、解約の前の保存を忘れないようにします。
送信側の設定も変わります。SPFレコードに新しいサーバーが含まれていないと、送ったメールが迷惑メールと判定されやすくなります。SPF・DKIM・DMARCの意味と確かめ方は会社のメールが迷惑メールになる原因とSPF・DKIM・DMARCで解説しています。
よくある失敗例と防ぎ方
サーバー移転の失敗の多くは、DNSのレコードの移し忘れ、確認が不十分なままの切り替え、旧サーバーの早すぎる解約の3つから起きます。
| 起きたこと | 主な原因 | 防ぎ方 |
| 切り替え後、メールだけ届かなくなった | 新しいDNSにMXレコードを登録していなかった | 切り替え前に旧DNSのレコードを一覧にし、新しいDNSと照らし合わせる |
| 問い合わせフォームの通知メールが届かない | フォームの送信設定(SMTPの接続先など)が旧サーバーのまま。SPFに新サーバーが含まれていない | 切り替え当日にフォームをテスト送信し、送信設定とSPFを見直す |
| 旧URLからの転送が効かなくなった | .htaccessに書いていたリダイレクトを移していなかった | .htaccessの中身を確認し、新サーバーで同じ動きになるようにする |
| 画面が真っ白になった、「重大なエラー」が表示された | 新サーバーのPHPの系列が旧サーバーと違っていた | 移転のときは同じ系列のPHPにそろえ、更新は後で行う |
| 検索結果から消えていった | テスト中にオンにした「検索エンジンがサイトをインデックスしないようにする」を戻し忘れた | 切り替え後に「設定」→「表示設定」を確認する |
| 数日後にサイトが表示されなくなった | 反映が終わる前に旧サーバーを解約した | 切り替えから一定期間、旧サーバーへのアクセスがなくなったことを確かめてから解約する |
| Search Consoleの所有権の確認が外れた | 確認用のTXTレコードやファイルを移していなかった | 確認の方法を調べ、レコードやファイルを新しい環境に移す |
Googleのガイドによると、サーバーを移した直後にGooglebotのクロールの頻度が一時的に下がるのは通常の動きで、数日かけて戻っていきます。移転後の1〜2週間は、Search Consoleでエラーやページの登録状況に大きな変化がないかを見ておきます。
移転先にエックスサーバーを選ぶ場合
他社のサーバーからエックスサーバーへ移る場合は、WordPressを複製する「WordPress簡単移行」や有料の「サーバー移転代行」を使えますが、どちらもDNSの切り替えとサイトの動作確認は利用者側で行う前提です。
| 機能(2026年10月時点) | 内容 | 注意点 |
| WordPress簡単移行 | 移行元のURLとWordPressのユーザー名・パスワードを入力して、wp-contentのデータとデータベースを移す | WordPress 4.2〜7.1、PHP 7.2以上が条件。マルチサイトとデータベースが2GBを超えるサイトは対象外。移行元の.htaccessは移らない |
| サーバー移転代行 | 1サイト33,000円(税込)、所要5営業日。移転元でSSLを使っていれば無料独自SSLも設定する | サイトの動作確認とネームサーバー(DNS)の変更は対象外。ビジネスプランのみ初回無料 |
| 動作確認URL | ネームサーバーを変える前に、新サーバーのサイトを見るためのURL | WordPressでは正しく確認できないため、hostsファイルでの確認が案内されている |
エックスサーバーのサーバー移転の手順でも、表示やメールを止めないために移転元の契約を残して期間を重ねることと、移転元の契約に1か月以上の余裕を持たせることが勧められています。申し込みからメールの設定、ネームサーバーの変更までの具体的な流れは他社サーバーからエックスサーバーへの移行手順で解説しています。
よくあるご質問
サーバー移転にはどのくらいの期間がかかりますか?
一般的な規模のWordPressサイトであれば、複製と確認の作業は数時間から数日、DNSの反映に数時間から1日程度が目安です。準備と切り替え後の様子見を含め、全体で2〜4週間の計画にしておくと余裕があります(例:1週目に準備、2週目に複製と確認、3週目に切り替え、4週目に旧サーバーの解約)。
サーバーを移すと、検索順位は下がりますか?
ドメイン名とURLを変えずに移し、表示できない時間やエラーを出さなければ、移転そのものが順位を大きく下げる要因にはなりにくいと考えられます。Googleのガイドでは、移転直後のクロールの頻度の低下は一時的なものと説明されています。順位に影響しやすいのは、インデックスさせない設定の戻し忘れ、URLの変更とリダイレクトの漏れ、表示速度の大きな悪化です。
ドメインも一緒に移管する必要がありますか?
必要ありません。ドメインの管理会社とサーバー会社は別々でよく、ネームサーバーやDNSのレコードを変えればサーバーだけを移せます。両方行う場合、移管の手続き中はネームサーバーを変えられない管理会社があるため、ドメインの期限に余裕があればサーバーの移転を先に済ませる方法があります。エックスサーバーも、移管に7〜10日程度かかり、移管申請中はネームサーバーを変更できないため、期限に余裕があれば移転から行うよう案内しています。
エックスサーバーの移転代行を頼めば、切り替えまで任せられますか?
エックスサーバーのサーバー移転代行の対象はデータの移行(WordPressはデータベースを含む)までで、サイトの動作確認とネームサーバー(DNS)の変更は対象外と案内されています。DNSの切り替え、フォームとメールの確認は、自社で行うか制作会社などに依頼する必要があります。
まとめ
WordPressのサーバー移転では、ファイルとデータベースだけでなく、.htaccess、メール、DNSのレコード、SSL、PHPの環境まで移す対象として洗い出します。旧サーバーの契約を残したまま新サーバーに複製し、hostsファイルなどで表示とフォームを確かめてからDNSを切り替え、メールは反映が終わるまで新旧の両方で受信できるようにしておきます。旧サーバーの解約は、切り替えが行き渡ったことを確かめてからの最後の作業です。
社内で作業する時間や担当者がいない場合は、当社のサーバー移転の代行で、事前の確認、移転作業、SSLの設定、DNSの切り替え、動作確認までをまとめてお受けしています。料金は88,000円〜(税別。不具合の修正は別途お見積り)で、保守プラン(月2万円〜・税別)と同時にお申し込みの場合は半額です。
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