取引先に送った見積もりのメールが「迷惑メールフォルダに入っていた」と言われた。Gmail 宛てのメールだけがエラーで戻ってくる。お知らせのメール配信を始めたら、届かない宛先が増えた。会社のメールのこうしたトラブルは、受信する側のサービスが送信者に求める条件を厳しくしたことと関係していることがあります。
Contents
会社のメールが迷惑メールになる主な原因 Gmail・Yahoo・Outlook.com の送信者の要件 SPF・DKIM・DMARC の役割 設定の前に:自社ドメインで送っているサービスを洗い出す エックスサーバーでの設定手順 SPF DKIM DMARC メールは別のサービス、Webサイトはエックスサーバーの場合 DMARC を段階的に強める進め方 設定できたかの確認方法 よくあるご質問 SPF のレコードを、サービスごとに分けて2つ書いてもよいですか? 送信数の少ない会社でも、DMARC は必要ですか? エックスサーバーでは、DKIM は最初から ON になっていますか? DMARC を「メールを配送しない」にすれば、なりすましメールは防げますか? まとめ
結論から言うと、会社のメールが迷惑メールになる主な原因は送信ドメイン認証の不足で、自社ドメインでメールを送っているすべてのサービスを SPF と DKIM に正しく登録し、DMARC は「何もしない(p=none)」とレポートの受け取りから始めて段階的に強めるのが基本の進め方です。
この記事では、迷惑メールになる原因、Gmail・Yahoo・Outlook.com の送信者の要件、3つの設定の役割、エックスサーバーでの設定手順、DMARC の強め方、設定できたかの確認方法を、2026年10月時点の公式情報にもとづいて解説します。問い合わせフォームの通知メールが届かない場合の切り分けは問い合わせフォームのメールが届かない原因と確認手順 で扱っています。
会社のメールが迷惑メールになる主な原因
会社のメールが迷惑メールに入る原因は、送信ドメイン認証の不足、送信元の評判の低下、送り方の問題の3つに分けて確かめます。
原因 よくある例 確かめること
SPF に送信元が登録されていない メールサービスを替えたのに古い SPF のまま。配信サービスやフォームの送信元が入っていない 受信したメールのヘッダーにある SPF の結果
DKIM の署名がない サーバーの DKIM の設定が OFF のまま。他社の DNS に公開鍵を登録していない DKIM の結果、Gmail の「署名元」の表示
DMARC が未設定、または方針と実態が合わない 大量に送るのに DMARC がない。強い方針にしたあと、一部の送信元が認証に通らない DNS の _dmarc のレコード、DMARC のレポート
送信元の評判の低下 フォームを悪用されて大量に送信された、受信者に迷惑メールとして報告された サーバーの送信状況、Postmaster Tools の迷惑メール率
送り方の問題 多数の宛先に一度に送る、配信停止の方法がない、表示上の送信元と署名のドメインが違う 配信の方法、メールのヘッダー
フォームが悪用されて送信元の評判が下がる問題の防ぎ方は問い合わせフォームのスパム対策 で解説しています。DNS の設定を変えたあとは反映に時間がかかり、Google は SPF が機能し始めるまでに最大48時間かかることがあるとしています。
Gmail・Yahoo・Outlook.com の送信者の要件
2024年2月から、Gmail と米国の Yahoo は個人のアドレス宛てに送るすべての送信者に SPF または DKIM を求め、大量に送る送信者には SPF・DKIM・DMARC のすべてを求めています。
受信するサービス すべての送信者 大量に送る送信者
Gmail(個人の Gmail アドレス宛て) SPF または DKIM、送信元の正引き・逆引き DNS、TLS での送信、迷惑メール率0.3%未満など 1日5,000件を超える送信者:SPF と DKIM の両方、DMARC(p=none でよい)、表示上の送信元(From)のドメインの一致、マーケティングのメールでのワンクリックの登録解除
米国の Yahoo(Yahoo が運営するメールのドメイン宛て) SPF または DKIM、迷惑メール率0.3%未満、正引き・逆引き DNS SPF と DKIM の両方、p=none 以上の DMARC(DMARC が pass すること)、From のドメインの一致、ワンクリックの登録解除と2日以内の処理。件数の基準は公表しない
Outlook.com(Microsoft の個人向けメール) ヘルプでは大量に送る送信者の要件を案内 同じドメインから5,000通以上:SPF と DKIM の両方が pass、DMARC の公開、From のドメインとの一致。満たさないと「550 5.7.515」で拒否
出典は Google のメール送信者のガイドライン 、Yahoo のSender Best Practices 、Microsoft のエラー 550 5.7.515 の説明 です。Gmail のよくある質問 では、5,000件はサブドメインを含む同じドメインからの合計で数えること、一度大量送信者とみなされるとその扱いに期限はないこと、2025年11月から要件を満たさない送信への措置を強めたこと、Google Workspace のアドレス宛てには適用されないことが説明されています。DKIM の鍵は1,024ビット以上が必要で、2,048ビットが推奨です。
日本の Yahoo!メール(LINEヤフー)は別の会社のサービスで、米国の Yahoo の FAQ も Yahoo Japan の方針には答えられないとしています。Yahoo!メールは2024年12月の案内 で、SPF・DKIM・DMARC のいずれの認証も導入していない、または判定をクリアしていないメールを、迷惑メールと判定したり受信を拒否したりする場合があるとしています。
Service
運用保守・集客改善のご相談はフェニックスデザインへ ナレッジベースを運営するフェニックスデザインが、今のサイトの数字を見るところから対応します。URLを入れるだけの無料簡易診断から。
SPF・DKIM・DMARC の役割
SPF は「送ってよいサーバーの一覧」、DKIM は「改ざんされていないことを示す署名」、DMARC は「From のドメインとの一致の確認と、失敗したときの扱いの宣言」を、それぞれ DNS で公開する仕組みです。
仕組み 受信側が確かめること DNS に置くもの よくある失敗
SPF メールを送ったサーバーが、ドメインの持ち主が許可したものか ドメインの TXT レコード(v=spf1 で始まる) SPF のレコードを2つ作る、送信元の登録漏れ、参照の回数が上限を超える
DKIM メールに付いた電子署名を、ドメインの公開鍵で検証できるか(途中で書き換えられていないか) 「セレクタ名._domainkey」の TXT レコード(公開鍵) サーバー側で署名を ON にしていない、他社の DNS に公開鍵を登録していない
DMARC SPF か DKIM が pass し、そのドメインが From のドメインと一致しているか。失敗したときの扱いとレポートの送り先 「_dmarc」の TXT レコード(v=DMARC1 で始まる) いきなり拒否の方針にして、正規のメールまで届かなくなる
SPF の仕様(RFC 7208 )では、1つのドメインに SPF のレコードを複数置くことはできず、include などで DNS を参照する回数は合計10回までで、超えると認証はエラー(permerror)になります。送信元を追加するときは、既存のレコードに書き足します。
DMARC で大切なのが「一致(アライメント)」です。例:メール配信サービスから自社のアドレスで送ると、署名が配信サービスのドメインのままになり、SPF や DKIM は pass しても From のドメインとは一致せず、DMARC では失敗することがあります。配信サービスを使う場合は、自社ドメインの DKIM を設定できるかを確かめます。
設定の前に:自社ドメインで送っているサービスを洗い出す
SPF・DKIM・DMARC を正しく設定するには、まず自社のドメインを送信元にしてメールを送っているサービスをすべて洗い出します。
送信元 例 確かめること
社員のメール レンタルサーバーのメール、Google Workspace など SPF に含まれているか、DKIM が ON か
Webサイトのフォーム 通知メール・自動返信(Webサーバーから送信) Webサーバーが SPF に含まれているか
メール配信 メールマガジン、お知らせの一斉送信 自社ドメインの DKIM を設定できるか、登録解除の仕組み
業務システム 予約・請求書・会計・営業支援などのシステムからの通知 自社のアドレスを送信元にしているか、その場合の SPF・DKIM
洗い出しで漏れた送信元は、DMARC を強めたときに届かなくなります。DMARC のレポートを使うと、社内で把握していなかった送信元も見つけられます。
エックスサーバーでの設定手順
エックスサーバーでは、SPF はドメインの追加時に自動で設定され、DKIM と DMARC はサーバーパネルでドメインごとに設定します。
SPF
SPF設定のマニュアル によると、「ドメイン設定」で独自ドメインを追加すると SPF のレコードが自動で追加されます。標準のレコードは「v=spf1 +a:sv***.xserver.jp +a:example.com +mx include:spf.sender.xserver.jp ~all」(sv*** は利用しているサーバー名)です。Gmail を送信のサーバーとして使う場合は「SPF設定」で「Gmail許可」を ON にすると、include:_spf.google.com が加わります。レコードを自分で書き換えるカスタム設定もできますが、その動作はサポートの対象外で、参照の回数が上限に達すると認証に失敗するおそれがあると注意書きがあります。
DKIM
DKIM設定 で、対象のドメインを OFF から ON に切り替えます。他社のネームサーバーを使っている場合は、サーバーパネルで設定したあと、「DKIM設定一覧」の[表示]で確認できるレコードを他社のネームサーバー側に追加します。マニュアルには新しく追加したドメインでの初期状態の記載がないため、ON になっているかを一度確かめます。
DMARC
DMARC設定 で、ドメインごとにポリシー(何もしない/迷惑メールとして配送する/メールを配送しない)とレポートの通知先を設定します。マニュアルは段階的な導入を勧めており、最初は「何もしない」にしてレポートを ON にし、結果を確かめながら強めるよう案内しています。レポートの通知先のアドレスは DNS に載って外部から見えるため、公開して問題のないアドレスを指定します。
メールは別のサービス、Webサイトはエックスサーバーの場合
社員のメールに Google Workspace などを使い、Webサイトだけをエックスサーバーに置いている場合は、SPF にメールサービスの値(Google Workspace なら include:_spf.google.com )と、フォームのメールを送る Webサーバーの両方を含め、DKIM はメールサービスの管理画面でも設定します。エックスサーバーのGoogle Workspace を使う場合のマニュアル では、DNS の設定のあとにサーバー側のメール機能を無効にする手順も示されています。
なお、WordPress 専用の XServer for WordPress はメールアカウントを作れないため(公式サイトの FAQ )、メールは別のサービスで運用し、そのサービスで SPF・DKIM を整えます。サービスの違いはエックスサーバーの3つのサービスの違い で解説しています。また、エックスサーバーのメールの送信数の目安 は全プラン共通で1時間1,500通・1日15,000通のため、大量のメール配信には配信用のサービスが向いています。
法人向けの XServerビジネスでも、SPF・DKIM・DMARC を同じようにサーバーパネルで設定できます(DMARC設定のマニュアル )。会社のメールとWebサイトを同じサーバーで運用する場合の候補の一つです。
DMARC を段階的に強める進め方
DMARC は、正規のメールがすべて認証に通っていることをレポートで確かめてから、何もしない → 迷惑メールとして扱う → 拒否、の順に強めます。
SPF と DKIM を先に整える。Google のDMARC の設定の案内 は、SPF・DKIM の設定から DMARC の設定まで48時間空けるよう勧めています
ポリシーを「何もしない(p=none)」にし、レポートの通知先を指定する。レポートは量が多くなるため、個人ではなく専用のアドレスにする
届いたレポートで、認証に失敗している送信元を確かめる。自社の正規の送信元なら SPF・DKIM に登録する(例:数週間から1か月ほど続けて見る)
自社の送信元からの失敗がなくなったら、「迷惑メールとして配送する(p=quarantine)」に変える。Google は、適用する割合(pct)を少しずつ上げる方法も案内しています
さらに様子を見て、「メールを配送しない(p=reject)」にするかを判断する
日本の Yahoo!メールは、DMARC のレポートの送信に対応していないと案内しています 。Yahoo!メール宛ての結果はレポートに表れないため、取引先に Yahoo!メールの利用者が多い場合は、テスト送信でも確かめます。
設定できたかの確認方法
設定のあとは、自社のアドレスから Gmail など外部のアドレスにメールを送り、受信したメールで SPF・DKIM・DMARC の結果を確かめます。
Gmail でメールを開き、送信者の名前の下の矢印を押すと「送信元」と「署名元」が表示されます。両方が出ていれば認証されたメールで、送信者の名前の横に「?」が出る場合は認証されていません(Gmail ヘルプ )
Gmail の「その他」から「メッセージのソースを表示」を選ぶとヘッダーの全体が開きます(Gmail ヘルプ )。「Authentication-Results」の行で spf=pass、dkim=pass、dmarc=pass になっているかを確かめます
DMARC のレポートで、認証に失敗している送信元と件数を確かめます
Google の Postmaster Tools で、迷惑メール率や認証の状況を確かめます。使うにはドメインの所有権の確認が必要です
エラーで戻ってきたメールは番号を見ます。Gmail の「5.7.26」は認証されていないメールの拒否、Outlook.com の「550 5.7.515」は大量送信者の認証の要件を満たしていないことを示します
よくあるご質問
SPF のレコードを、サービスごとに分けて2つ書いてもよいですか?
いけません。SPF の仕様では1つのドメインに複数の SPF のレコードを置くことはできず、認証がエラーになります。メールサービスや配信サービスを追加するときは、既存のレコードに include などを書き足して1つにまとめ、参照の回数が10回を超えないようにします。
送信数の少ない会社でも、DMARC は必要ですか?
Gmail で DMARC が必須なのは大量に送る送信者ですが、自社をかたるなりすましメールへの対策になるため、「何もしない」の方針からでも設定しておくことをおすすめします。Google は SPF と DKIM の両方で一致を整えることを勧めており、将来は必須になる可能性があるとしています。
エックスサーバーでは、DKIM は最初から ON になっていますか?
SPF はドメインの追加時に自動で設定されると明記されていますが、DKIM と DMARC のマニュアルには初期状態の記載がありません。サーバーパネルの「DKIM設定」と「DMARC設定」で、ドメインごとの状態を確かめてください。
DMARC を「メールを配送しない」にすれば、なりすましメールは防げますか?
自社のドメインをそのまま使ったなりすましのリスクは下げられますが、完全には防げません。エックスサーバーのマニュアルも、受信側の設定によっては指定したポリシーに従われない場合があるとしています。また、よく似た別のドメインを使ったなりすましは DMARC の対象外のため、取引先への周知などと組み合わせます。
まとめ
会社のメールが迷惑メールになる主な原因は、送信ドメイン認証の不足です。まず自社ドメインで送っているサービスを洗い出し、SPF を1つのレコードにまとめて登録し、それぞれのサービスで DKIM を ON にします。DMARC は「何もしない」とレポートから始め、正規のメールがすべて認証に通ることを確かめてから、迷惑メール扱い、拒否へと段階的に強めます。Gmail・米国の Yahoo・Outlook.com は、とくに大量に送る送信者に3つの設定をそろえるよう求めています。
サーバーの移転では、DNS を切り替えるときに SPF・DKIM・DMARC のレコードも移し替えが必要です。他社のサーバーからの移転にあわせてメールの設定も見直したい場合は、当社のサーバー移転・PHP更新の代行 (サーバー移転一式 88,000円〜・税別。事前確認・移転・SSL・DNS の切り替え・動作確認)にご相談ください。
関連記事:会社のサーバー・ドメイン・セキュリティの基礎(まとめ) /問い合わせフォームのメールが届かない原因と確認手順 /他社サーバーからエックスサーバーへの移行手順 /ドメインとサーバーを自社と制作会社のどちらで管理するか