保守会社から「WordPress の管理画面に IP 制限をかけましょう」と勧められたが、テレワークの社員が自宅から更新できなくなるのではと心配している。会社の回線だけを許可したら、外出先からお知らせを直せなくなった。制作会社にも作業してもらうが、どう許可すればよいか分からない。管理画面の IP 制限は、こうした場面で判断に迷いやすい対策です。
結論から言うと、WordPress の管理画面の IP 制限は、許可した接続元以外からはログイン画面にもたどり着けなくして不正ログインのリスクを下げる対策で、テレワークや外出先から使う人がいるなら、全員が同じ固定 IP アドレスを経由する仕組みを用意し、制作会社の接続元も含めて登録を管理し、締め出されたときに戻す経路を残してから有効にします。パスワード・二要素認証・更新の代わりにはならないため、ほかの対策と組み合わせて使います。
この記事では、IP 制限の効果と限界、固定 IP がない場所で起きる問題と解決方法、エックスサーバーの「WordPressセキュリティ設定」での手順、制作会社に許可する方法、締め出されたときの戻し方を、2026年10月時点の公式情報で解説します。WordPress のセキュリティ対策の全体と優先度はWordPressのセキュリティ対策チェックリストで扱っています。
WordPress の管理画面の IP 制限とは
管理画面の IP 制限は、/wp-admin(管理画面)と /wp-login.php(ログイン画面)へのアクセスを、登録した IP アドレスからだけに限る設定です。
IP アドレスは、インターネットに接続している機器の「接続元の番号」です。会社の回線で固定の IP アドレスを契約していれば、社内からのアクセスはいつも同じ番号になるため、その番号だけを許可すれば、ほかの場所からはログイン画面が表示されなくなります。WordPress の公式ドキュメントの総当たり攻撃への対策でも、wp-login.php へのアクセスを特定の IP アドレスに限る設定の例が、Webサーバーの種類ごとに示されています。
エックスサーバーと XServerビジネスでは、サーバーパネルのWordPressセキュリティ設定にある「IPアドレス制限」で、設定ファイル(.htaccess)を編集せずに設定できます。初期状態は OFF で、設定はドメインごとです。
IP 制限の効果と限界
IP 制限は、許可していない場所からのログインの試みを入口で止めるため、パスワードの総当たりや漏れたパスワードによる不正ログインのリスクを大きく下げますが、許可した場所から入られた場合や、管理画面以外の入口を使う攻撃は防げません。
IP 制限で防げること
IP 制限では防げないこと
許可していない接続元からの、パスワードの総当たりや漏れたパスワードでのログイン
許可した接続元の端末がウイルスに感染した場合や、許可した回線をほかの会社と共用している場合
退職者や契約を終えた外部の人が、社外からログインすること(登録を消せば止まる)
プラグインやテーマの脆弱性を、表側のページから突く攻撃
ログイン画面への大量のアクセスによるサーバーの負荷
エックスサーバーの IP アドレス制限の対象として書かれていない入口(XML-RPC や REST API など)への攻撃
固定 IP の契約がない自宅の回線やスマートフォンの回線は IP アドレスが変わるため、会社の固定 IP だけを許可すると、テレワークや外出先からは管理画面に入れなくなります。
接続する場所
IP アドレス
IP 制限をかけたときに起きること
会社(固定 IP を契約している)
変わらない
登録すれば使い続けられる
会社(固定 IP を契約していない)
変わることがある
ある日突然、全員が入れなくなる
自宅の回線
ルーターの再起動などで変わることがある
変わるたびに登録し直す必要がある
スマートフォン・モバイルルーター
接続のたびに変わることがある
登録が追いつかない
シェアオフィス・ホテル・カフェの Wi-Fi
ほかの利用者と同じ IP アドレスを使う
登録すると、同じ回線を使う他人もログイン画面にたどり着ける
海外の出張先
国外の IP アドレス
エックスサーバーでは国外アクセス制限(初期状態は ON)にも当たる
そのたびに IP アドレスを登録し直したり、広い範囲をまとめて許可したり、作業のたびに制限を OFF にしたりすると、管理の手間が増えるうえ、消し忘れや戻し忘れで制限の意味が薄れます。前述の公式コラムも、メンバーの自宅の IP アドレスが変わるたびに設定を書き換える手間を挙げ、社外のライターや制作会社に作業を委託している場合は、全員の接続元を正確に把握し続けるのは現実的ではないとしています。
テレワークでも IP 制限を続ける方法の比較
テレワークでも IP 制限を続けるには、全員が「決まった出口」を通ってから管理画面に入る形にするのが基本で、方法は会社の VPN を使うか、固定 IP を提供するサービスを使うかに分かれます。
方法
仕組み
向いている会社
注意点
管理画面の作業は会社からだけ行う
会社の固定 IP だけを登録する
更新の担当者が出社して作業する
テレワーク・外出先からは更新できない。会社の回線に固定 IP の契約が必要
会社の VPN を経由する
自宅などから社内のネットワークに接続し、会社の固定 IP から外に出る
社内に VPN の機器と管理する人がいる
機器の設定と保守、会社の回線の負荷、外部の人の接続の管理
固定 IP の VPN サービスを使う
端末からサービスの専用ネットワークを通り、契約ごとの固定 IP から外に出る
機器を置かずに、社員と外部の人の接続をまとめて管理したい
人数分の月額費用、端末への設定
IP 制限をせず、BASIC認証と二要素認証で守る
ログイン画面の前に、もう1組の ID とパスワードを置く
接続元をどうしても絞れない
ID とパスワードの共有と変更の管理が必要。IP 制限ほど入口は絞れない
BASIC認証は、エックスサーバーではサーバーパネルのアクセス制限で、指定したフォルダーにかけられます。社内に VPN の機器がない中小企業では、3つ目の固定 IP のサービスが導入しやすい方法です。
XServer 固定IPアクセスでの解決
XServer 固定IPアクセスは、端末から専用のネットワーク(VPN)を通ってインターネットに出ることで、自宅や外出先からでも契約ごとに割り当てられた同じ固定 IP アドレスを使えるサービスで、機器の設置や工事はいりません(2026年10月時点)。
公式サイトの説明では、固定 IP アドレスは契約ごとに専用で割り当てられ、ほかのユーザーとは共用しません(アドレスは指定できず、自動で割り当てられます)。サーバーの設置国は日本で、1つの固定 IP にライセンスを追加すると複数の人が同時に使えます。1つのライセンスは複数の端末に設定できますが、同時に接続できるのは1台です。
接続方法は2つ:専用アプリの WireGuard(Windows・macOS・iOS/iPadOS・Android・Linux など。管理画面で決めた接続先だけを固定 IP 経由にすることもできる)と、OS に標準で入っている VPN 機能を使う IKEv2(Windows・macOS・iOS/iPadOS。すべての通信が固定 IP 経由になる)。1つの固定 IP の中で両方を混ぜて使うことはできない
機能はどのプランも同じで、違いは1ライセンスあたりの料金と最小のライセンス数だけです(よくある質問)。例:社員3人と制作会社の担当者1人で使う場合、ライトプランの4ライセンスで月額3,520円です。IP アドレス制限を ON にすると国外アクセス制限より優先されるため、海外の出張先からでも、固定 IP を経由すれば同じ条件で管理画面に入れます。
エックスサーバーの「WordPressセキュリティ設定」で IP 制限をかける手順
設定は、全員が許可する経路で接続できることを確かめてから、サーバーパネルでホワイトリストを登録し、IP アドレス制限を ON にする順に進めます。
管理画面に入る人と接続元を一覧にする:社員、制作会社、保守会社ごとに、使う接続元(会社の固定 IP、固定IPアクセスの IP、制作会社の固定 IP など)と、作業の目的、許可する期限を書き出します
全員が許可する経路で接続できるかを確かめる:固定IPアクセスを使う場合は、管理者がライセンスごとの設定ファイルを渡し、各自の端末に WireGuard を入れて読み込み、接続を有効にします。接続中の IP アドレスが契約した固定 IP になっているかも確かめます
多くのサーバーで、管理画面の機能か設定ファイル(.htaccess など)で設定できます。WordPress の公式ドキュメントにも、Webサーバーの種類ごとの設定例があります。固定IPアクセスはアクセスする側に固定 IP を用意するサービスなので、サーバー会社にかかわらず使えます。
まとめ
WordPress の管理画面の IP 制限は、/wp-admin と /wp-login.php へのアクセスを許可した接続元だけに限り、不正ログインのリスクを下げる対策です。固定 IP のない自宅や外出先から使う人がいるなら、会社の VPN か固定 IP のサービスで全員が同じ出口を通る形にし、制作会社には期間を決めて自社で管理できる接続元を許可します。設定は全員の接続を確かめてから ON にし、締め出されたときはサーバーパネルからホワイトリストを直して戻します。パスワード・二要素認証・更新・権限の管理とは組み合わせて使います。