ChatGPT をはじめとする生成 AI で、ブログ記事、サービスの紹介文、メールの下書きを作る会社が増えています。一方で、「AI が書いた文章をそのまま公開してよいのか」「著作権や法律に触れないか」「Google の評価が下がらないか」が分からず、社内で使い方を決められていないという声もよく聞かれます。
生成 AI で作った文章は、各サービスの利用規約の範囲で業務や商用に使えますが、既存の著作物に似ていれば人が書いた場合と同じく著作権侵害になり、事実の誤りもそのまま残ります。公開する前に、人による事実確認と加筆、既存の文章との類似の確認、入力してよい情報の社内ルールをそろえることが前提です。
この記事では、文化庁「AI と著作権に関する考え方について」、OpenAI の利用規約、Google 検索のガイダンスなど 2026年10月時点の公式情報をもとに、生成 AI で文章を作るときのリスク、著作権の考え方、社内ルール、SEO への影響、記事作成の実務の手順を解説します。
ChatGPT とは:文章を「予測して作る」生成 AI
ChatGPT は OpenAI が提供する対話型の生成 AI で、指示(プロンプト)に応じて文章を作りますが、事実を調べて答える仕組みではなく、もっともらしい言葉の並びを予測して文章を作るものです。
ChatGPT は 2022年11月に公開され、同じような生成 AI には Google の Gemini、Anthropic の Claude、Microsoft の Copilot などがあります。現在は Web 検索の結果を参照して出典のリンクを示す機能もあり、公開当初の「学習した時点より新しい情報には答えられない」という弱点はかなり小さくなりました。
それでも、誤った内容がもっともらしく書かれる問題(ハルシネーション)はなくなっていません。Google は、生成モデルは事実を取り出すのではなく可能性の高い単語の並びを予測するため、不正確な情報が含まれることがあると説明しています(Google 検索セントラル:生成 AI コンテンツの使用に関するガイダンス)。OpenAI の利用規約にも、出力は常に正確とは限らず、利用者が用途に照らして正確さを確かめる必要があると書かれています。
AI の開発のために著作物を学習させることは、著作権法第30条の4により、原則として権利者の許諾なく行えます。ただし、学習した作品の表現をそのまま出力させる目的の学習などは例外とされています。生成 AI を使って文章を作る企業が主に関わるのは、もう一方の「生成・利用の段階」で、ここでは通常の著作権侵害と同じ基準で判断されます。
侵害になるかは「類似性」と「依拠性」で判断する
類似性は、既存の著作物の創作的な表現と似ているかどうかです。依拠性は、既存の著作物をもとに作ったかどうかです。文化庁の考え方では、生成 AI の学習データにその著作物が含まれていたことが分かれば、利用者が元の作品を知らなかったとしても、通常は依拠性が推認されるとしています。また、チェックリストでは、既存の作品の題名や固有名詞をプロンプトに入れると、利用者がその作品を認識していたと推認される要素になると説明しています。
OpenAI の利用規約(2026年1月1日発効)では、法律で認められる範囲で、入力した内容の権利は利用者に残り、出力の権利も利用者に帰属するとされています。ただし、ほかの利用者にも似た出力が返ることがあり、その出力までは対象になりません。また、AI の出力を人が書いたものだと偽ることは禁止されています。ほかの生成 AI サービスを使う場合も、出力の権利、商用利用の可否、入力データの扱いを利用規約で確認します。
社内ルールで決めておくこと
生成 AI を業務で使う前に、使ってよいツール、入力してはいけない情報、公開前の確認手順、記録の残し方を社内ルールとして決めます。
ルールの項目
決める内容の例
使ってよいツールとプラン
会社として契約した法人向けプランを使う。個人向けプランを使う場合は、学習に使わない設定にする
入力してはいけない情報
顧客名や個人情報、未公開の数字や計画、契約の内容、他社の文章や書籍の全文
公開前の確認
事実確認、類似の確認、表記のルール、責任者の承認の順番と担当者
専門分野の扱い
健康・医療、金融、法律、補助金などの記述は、専門家または担当部署が確認する
記録の残し方
使ったツール、プロンプト、生成した日、人が直した箇所を残す
AI の使用の示し方
記事の作り方を読者にどう説明するか、社としての方針を決める
OpenAI の案内では、ChatGPT Business・Enterprise・Edu と API は、初期設定で入力と出力をモデルの学習に使わないとされています。個人向けの Free・Plus・Pro では、設定の「データ コントロール」で「すべての人のためにモデルを改善する」をオフにすると、それ以降の会話が学習に使われなくなります(OpenAI ヘルプ:モデルの学習を無効にする方法)。
個人情報については、個人情報保護委員会が 2023年6月2日に生成 AI サービスの利用に関する注意喚起を出しています。個人情報を含むプロンプトを入力する場合は、利用目的の範囲内かを十分に確認し、入力した個人データが回答の作成以外(機械学習など)に使われないことを事前に確かめるよう求めています。
Google は文章の作り方ではなく内容の品質で評価するため、生成 AI を使うこと自体は問題になりませんが、読者への価値を加えずに大量のページを作るとスパムポリシー違反になります。
Google のスパムに関するポリシーでは、利用者の役に立つことではなく検索順位の操作を主な目的として大量のページを作ることを「大量生成されたコンテンツの不正使用」とし、その例として、生成 AI などを使って価値を加えずに大量のページを作ることを挙げています。前述の生成 AI コンテンツのガイダンスでも、生成 AI はテーマの調査や文章の構成づくりに役立つとしたうえで、公開前の事実確認を求め、その対象には title、説明文、構造化データ、画像の代替テキストも含まれるとしています。
AI 検索の回答に引用されるかどうかも、検索で見つかることと、ほかのページにない一次情報があることが土台になります。一般論だけを AI でまとめた記事は、検索でも AI の回答でもほかのページと区別されにくくなります。検索と AI 検索の違いはSEOとLLMO(AIO・GEO)の違いで解説しています。
生成 AI で記事を作る実務の手順
生成 AI を記事作成に使うときは、人が「何を書くか」と「事実」を決め、AI には構成案・下書き・推敲の補助を任せ、最後に人が確認して公開する流れにします。
確認をおすすめします。AI をどの工程で使うか、事実確認と類似の確認を誰が行うか、納品物の著作権がどうなるかを契約前に確かめます。当社も AI を調査や下書きの補助に使いますが、キーワードの設計、お客様固有の情報の取材、事実確認、公開後の計測と書き直しは人が行い、原稿は必ずお客様の事実確認を経て公開します。納品した記事の著作権は、お支払いの完了後にお客様へ譲渡します。
まとめ
ChatGPT などの生成 AI で作った文章は、規約の範囲で業務や商用に使えますが、既存の著作物に似ていれば人が書いた場合と同じく著作権侵害になり、事実の誤りもそのまま残ります。文化庁の考え方とチェックリスト、個人情報保護委員会の注意喚起、Google のスパムポリシーを踏まえ、使ってよいツールと入力してはいけない情報、公開前の事実確認と類似の確認、記録の残し方を社内ルールにしてから使うことが大切です。検索で評価される記事にするには、AI に任せる部分と、人が一次情報を加えて確認する部分を分けて進めます。