「自社の強みは何か」を社内で話し合うと、「品質」「柔軟な対応」「長年の実績」といった言葉に落ち着くことがよくあります。どれも事実でも、競合のサイトにも同じ言葉が並んでいるため、見込み客が比べたときの決め手にはなりません。一方で、実際に取引している顧客は、もっと具体的な理由で自社を選んでいます。
自社の強みは、最近取引を始めた顧客や長く取引が続いている顧客に「なぜ選んだか」「何と比べたか」を具体的な場面で聞き、複数の顧客に共通する理由を抜き出すと見つかります。顧客の言葉で集めた理由は、そのままサイトの「選ばれる理由」やトップページの一文の材料になります。
この記事では、顧客インタビューで強みが見つかる理由、聞く相手の選び方、依頼の仕方と依頼文の例、選ばれた理由を引き出す質問項目、聞いた話のまとめ方とサイトへの反映方法を解説します。
顧客インタビューで強みが見つかる理由
選ばれた理由をいちばんよく知っているのは選んだ顧客であり、社内では当たり前になっている工夫が、顧客にとっては他社との違いになっていることが多いからです。
経済産業省が企業の経営状態を把握するために公開している「ローカルベンチマーク」のガイドブックでも、取引先ごとに「なぜ自社と取引が続いているのか」「その相手から選ばれている理由は何か」を記入するよう説明されています。あわせて、業務の工夫を「なぜ」と繰り返し問うて掘り下げることや、売上が立っている以上、顧客に選ばれている何らかの理由がある、という考え方も示されています(経済産業省「ローカルベンチマーク ガイドブック(企業編)」)。社内で考えるだけでは見えにくいその理由を、顧客に直接聞いて確かめるのが顧客インタビューです。
社内で考えた強みと、顧客が実際に挙げる理由は、たとえば次のように違います。
| 社内で考えた強み | 顧客が挙げた理由(例) | サイトでの使いやすさ |
| 高品質 | 図面の不備を、見積もりの段階で指摘してくれた | 手順として書けるため、比べたときの違いになる |
| 柔軟な対応 | 担当者が変わらないので、前回の経緯を説明し直さなくてよい | 体制として書ける |
| 豊富な実績 | 同じ業界の別の会社でどう進めたかを、具体的に話してくれた | 事例ページの書き方の手がかりになる |
| 価格が安い | 見積もりの内訳が分かり、社内で説明しやすかった | 料金ページの改善点になる |
顧客インタビューと似た方法に、アンケートや営業記録の分析があります。目的によって使い分けます。
| 方法 | 分かること | 向いている場面 |
| アンケート(選択式・満足度) | 満足度の傾向、多くの顧客に共通する評価 | 顧客数が多く、全体の傾向を数で見たいとき |
| 顧客インタビュー(30〜60分の対話) | 選んだ理由、比べた相手、決め手になった場面、社内での説明のしかた | 強みや選ばれる理由を言葉で見つけたいとき |
| 営業記録・問い合わせ内容の分析 | 問い合わせのきっかけ、受注・失注の理由 | インタビューの前に仮説を立てたいとき |
強みを見つける目的なら、選択肢を用意するアンケートより、顧客が自分の言葉で話すインタビューが向いています。「品質」「対応」のような選択肢を並べると、顧客はその中から選ぶだけで、具体的な場面が出てこないためです。
誰に聞くか:対象の選び方
聞く相手は、最近1〜2年で取引を始めた顧客と長く取引が続いている顧客を中心に、今後増やしたい種類の顧客を含めて5〜8社を選びます。
| 対象 | 聞ける話 | 注意点 |
| 最近1〜2年で取引を始めた顧客 | 比べた会社、決め手、探し方(検索した言葉など) | 記憶が新しいうちに聞く |
| 長く取引が続いている顧客 | 取引が続いている理由、他社に切り替えなかった理由 | 「最初に選んだ理由」と「続けている理由」を分けて聞く |
| 今後増やしたい業種・規模の顧客 | サイトで狙う相手が何を重視するか | 件数が少なくても1〜2社は入れる |
| 取引が終わった顧客、見積もりで選ばれなかった相手 | 選ばれなかった理由、伝わっていなかったこと | 関係が良好な場合に限り、無理に頼まない |
| 同じ顧客の担当者と決裁者 | 選定の理由と、決裁の理由の違い | できれば別々に聞く |
BtoBでは、同じ会社の中でも担当者が重視したことと、決裁者が重視したことが違います。担当者は「話が通じた」「対応が速い」を挙げ、決裁者は「会社の体制」「費用の説明が明確」を挙げる、といった違いはよくあります。役割ごとの違いの整理の仕方はBtoBペルソナの作り方で解説しています。
聞き手は、その顧客の担当営業以外が務めると、顧客が率直に話しやすくなります。社内に適任がいない場合は、外部の制作会社やライターに依頼する方法もあります。
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インタビューの依頼の仕方
依頼は担当営業から口頭で打診したうえで、目的・所要時間・方法・内容の使い道・公開の有無を書いた依頼文を送ります。
依頼文には次の項目を入れます。
- 目的:サービスの改善と、ホームページの内容の見直しのため
- 聞きたいこと:取引を始めたきっかけ、決め手、改善してほしい点など
- 所要時間と方法:30〜60分、オンラインまたは訪問
- 録音の有無:記録のために録音してよいか
- 内容の使い道:社内の検討に使うのか、社名を出して公開するのか
- 公開する場合の確認:公開前に原稿を確認いただくこと
- 候補日と返信の期限
依頼文の例(例:◯◯株式会社が取引先に送る場合)
「いつもお世話になっております。◯◯株式会社の△△です。当社では、サービスの改善とホームページの見直しに向けて、お取引先さまに当社を選んでいただいた理由や、改善してほしい点を伺っています。つきましては、30分ほどオンラインでお話を伺えないでしょうか。伺った内容は社内の検討に使い、社名やお名前を外部に出すことはありません。記録のため録音させていただけますと助かります。ご都合のよい日時を、◯月◯日までにお知らせいただけますと幸いです。」
強みを見つけることが目的なら、最初は「社内の検討に使い、公開しない」と約束したほうが、顧客は率直に話しやすくなります。話の中で公開してもよさそうな内容が出てきたら、あらためて掲載の許諾をお願いします。導入事例として公開する前提の取材の進め方は、導入事例インタビューの質問と作り方で解説しています。
選ばれた理由を引き出す質問項目
質問は「選ぶ前」「比べたとき」「取引してから」「これから」の時間の順に並べ、形容詞ではなく具体的な場面を聞く形にします。
| 段階 | 質問 | ねらい |
| 選ぶ前 | 当時、どんなことに困っていましたか | 発注のきっかけと課題 |
| 選ぶ前 | 何がきっかけで、新しい会社を探し始めましたか | 探し始める引き金 |
| 選ぶ前 | どうやって候補を探しましたか(検索した言葉、紹介、展示会、AIへの質問など) | 見つけてもらう経路と言葉 |
| 比べたとき | ほかにどんな会社を検討しましたか | 比べられている相手 |
| 比べたとき | 比べるときに、何を見ましたか | 比較の基準 |
| 比べたとき | 最終的に当社に決めた理由を1つ挙げるとしたら何ですか | 決め手 |
| 比べたとき | 社内では、当社をどう説明しましたか | 稟議や報告で使われた言葉 |
| 比べたとき | 決める前に不安だったことはありますか | よくある質問の材料 |
| 取引してから | 実際に取引してみて、予想と違ったことはありますか | 期待と実際の差 |
| 取引してから | ほかの会社と違うと感じた場面を、具体的に教えてください | 強みの根拠になる出来事 |
| 取引してから | 取引を続けている理由は何ですか | 続いている理由 |
| これから | 知り合いに当社を紹介するとしたら、何と説明しますか | キャッチコピーの候補 |
| これから | 改善してほしいことはありますか | 弱みと改善点 |
| これから | どんな会社には、当社は向かないと思いますか | 「向いていない相手」の材料 |
質問を深めるときは、次の点に気をつけます。
- 形容詞が出たら場面を聞く:「対応が早い」と言われたら「たとえばどんなときですか」「そのとき何がありましたか」と続けます。
- 「なぜ」を重ねる:答えに対して「それはなぜ大事だったのですか」と聞くと、顧客が本当に重視していることに近づきます。
- 答えを誘導しない:「品質が良いからですよね」のように、こちらが期待する答えを先に言わないようにします。
- 話した言葉のまま記録する:顧客の言い回しは、そのままサイトの言葉の材料になります。要約せずに、メモと録音を残します。
- 全部聞こうとしない:14問すべてを聞く必要はありません。30分なら、決め手・比べた相手・紹介するときの説明の3つを優先します。
聞いた話のまとめ方:顧客の言葉を並べて共通点を探す
聞いた話は発言のまま書き起こし、決め手・比べた点・不安・続けている理由・紹介の言葉に分けて並べ、3社以上で出た理由を強みの候補にします。
- 録音を文字に起こし、顧客の発言を言い回しのまま残す。
- 発言を1行ずつ表に移し、会社(社内用の記号でよい)・役割・発言を記入する。
- 各発言を「決め手」「比べた点」「不安だったこと」「続けている理由」「紹介の言葉」「改善してほしいこと」に分類する。
- 複数の顧客に共通する理由を抜き出す。目安として、3社以上で同じ趣旨の発言が出たものを強みの候補にする。
- 社内で考えていた強みと照らし合わせ、「顧客も挙げた強み」「顧客だけが挙げた強み」「社内だけが思っている強み」に分ける。
- 候補ごとに、数字や手順などの裏づけを社内で確かめる。「翌日に返事が来る」と言われたなら、実際にどのくらいの案件で翌日に返しているかを確かめます。
整理表は、たとえば次のような形になります(例:設備保守会社が6社に聞いた場合)。
| 発言(要約) | 分類 | 同じ趣旨の社数 | サイトで使う場所 |
| 担当者が変わらず、設備の履歴を覚えていてくれる | 続けている理由 | 4社 | 選ばれる理由、保守の体制 |
| 点検報告書に写真と次回までの注意点が書いてある | 決め手 | 3社 | サービス詳細、事例 |
| 料金の決まり方が見積もりの段階で分かった | 比べた点 | 3社 | 料金の目安、よくある質問 |
| 切り替えのとき、生産を止めずに済むか心配だった | 不安だったこと | 2社 | よくある質問、保守の流れ |
| 「機械のかかりつけ医」と紹介している | 紹介の言葉 | 1社 | キャッチコピーの候補 |
「顧客だけが挙げた強み」は、社内では当たり前すぎて言葉にしていなかったものです。サイトで他社との差がつきやすいのは、多くの場合この部分です。反対に「社内だけが思っている強み」は、伝わっていないか、顧客にとっては重要でない可能性があります。
サイトへの反映:どのページに何を書くか
共通する決め手はトップページの最初の一文と「選ばれる理由」のページに、比べられた点は料金やサービス詳細に、不安はよくある質問に、紹介の言葉はキャッチコピーの候補に使います。
| インタビューで得た言葉 | 反映するページ | 書き方 |
| 共通する決め手 | トップページの最初の一文、選ばれる理由(強み)のページ | 形容詞をやめ、対象・数字・手順で書く |
| 比べられた点 | サービス詳細、料金の目安、比較表 | 比べるときに見られた項目を、比べやすい形で載せる |
| 不安だったこと | よくある質問、サービスの流れ | 質問の形のまま見出しにして答える |
| 紹介の言葉 | キャッチコピー、検索結果のタイトル・説明文 | 顧客の言い回しを候補にして、社内で選ぶ |
| 向いていない相手 | 選ばれる理由のページ、よくある質問 | 否定ではなく条件として書く |
| 掲載を許可された発言 | 導入事例、お客様の声 | 許諾の範囲で、業種・規模・課題とあわせて載せる |
顧客の言葉を、比べられたときに違いが伝わる文章に整える手順は、差別化の言語化:「強み」を「選ばれる理由」に変える6段の階段で解説しています。当社の特徴のページでも、他社との違いを進め方・体制・納品物で説明し、「向いている会社、向いていない会社」を条件として書いています。
当社のコーポレートサイト制作では、ブランディング設計の工程で事業の強み・顧客が選ぶ理由・競合との違いを整理し、ブランディング設計書にまとめてから原稿とデザインに進みます。強みが伝わっていないサイトでは、ヒアリングで「選ばれている理由」を言葉にし、強み・実績・事例のページを新設します。導入事例として公開する取材も、取材依頼文と質問の設計からオンライン取材(60分)、原稿の作成、掲載許諾の確認まで行っています(導入事例は1本8万円〜・税別)。
よくあるご質問
何社くらいに聞けばよいですか?
5〜8社が目安です。少なすぎると1社の事情に引っ張られ、多すぎるとまとめる手間が増えます。3社以上で同じ趣旨の理由が出てくれば、強みの候補として扱えます。5社聞いても共通する理由が出ない場合は、聞く相手の業種や規模が広すぎないかを見直します。
顧客の担当営業が聞いてもよいですか?
聞くことはできますが、顧客は担当営業に対しては改善点や不満を言いにくいものです。担当営業は依頼と同席にとどめ、質問は別の社員や外部の聞き手が行うと、率直な話が出やすくなります。
インタビューで聞いた内容をサイトに載せてもよいですか?
「公開しない」と約束して聞いた内容は、そのまま載せません。載せたい発言があれば、内容と掲載場所を示してあらためて許諾をいただき、公開前に原稿を確認していただきます。社名を出せない場合も、業種・規模・課題・対応の内容で書けば、見込み客の判断材料になります。当社の制作実績も、掲載許諾の方針により社名を出さず、業種とサイトの種類、設計の考え方を公開しています。
インタビューはどのくらいの頻度で行えばよいですか?
サイトのリニューアルや事業の見直しの前にまとめて行い、その後は年1回、新しく取引を始めた顧客を中心に数社に聞くと、強みの変化に気づけます。問い合わせや初回の打ち合わせで「どこで知ったか」「何が決め手か」を聞く習慣をつけておくと、次のインタビューの準備にもなります。
まとめ
自社の強みは、社内の会議よりも、自社を選んだ顧客の言葉の中から見つかります。
- 最近取引を始めた顧客と長く続いている顧客を中心に、5〜8社に聞く
- 依頼文で目的・所要時間・使い道・公開の有無を伝え、最初は公開しない前提で聞く
- 質問は「選ぶ前→比べたとき→取引してから→これから」の順に、場面を聞く
- 発言を言い回しのまま分類し、3社以上で出た理由を強みの候補にして、裏づけを社内で確かめる
- 決め手はトップと選ばれる理由のページに、不安はよくある質問に、紹介の言葉はキャッチコピーの候補に使う
顧客の言葉をもとに強みを整理し、サイトの構成と原稿に落とし込むところから相談したい場合は、コーポレートサイト制作のページで進め方とプランをご確認ください。
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