「コーポレートサイトを見ているのは誰か」と聞かれると、多くの会社が「お客様」と答えます。間違いではありませんが、BtoBの場合、1つの発注に関わる人は1人ではありません。検索して候補を探す担当者、候補を比べて社内で説明する上長、費用と取引のリスクを見て決める決裁者が、同じサイトを別々の目的で読んでいます。さらに、求職者や仕入先、金融機関も同じサイトを訪れます。
BtoBのペルソナは「1人の人物像」ではなく、同じ発注に関わる担当者・上長・決裁者の3人分を、役割・確かめたいこと・判断の基準・見るページの項目で作ると、コーポレートサイトの構成と原稿を決める道具として使えます。
この記事では、コーポレートサイトを訪れる閲覧者の種類、BtoBで3人分のペルソナを作る理由、ペルソナシートの項目と記入例、作り方の手順、サイト設計への使い方を解説します。
コーポレートサイトの閲覧者は誰か:顧客だけではない
コーポレートサイトの閲覧者は、新規の見込み客を中心に、既存顧客、求職者、仕入先・協力会社、金融機関や株主など、確かめたいことの違う人たちです。
| 閲覧者 | 来るきっかけ | 確かめたいこと | 主に見るページ |
| 新規の見込み客 | 課題やサービス名での検索、AIへの質問、展示会、紹介 | 自社の用件に対応できるか、実績、費用の目安 | サービス詳細、事例、料金の目安、よくある質問 |
| 既存顧客 | 社名検索、担当者からのメール | 新しいサービス、連絡先、お知らせ | お知らせ、サービス一覧、問い合わせ |
| しばらく取引のない顧客 | 社名検索、久しぶりの用件 | 今も同じ仕事をしているか、窓口はどこか | トップ、サービス、会社概要 |
| 求職者 | 求人媒体を見たあとの社名検索、「地域名+職種」の検索 | 仕事の中身、働く人、待遇、会社の安定性 | 採用情報、代表メッセージ、会社概要 |
| 仕入先・協力会社 | 取引開始前の確認、協力会社の募集 | 取引してよい会社か、事業の内容 | 会社概要、事業内容、協力会社募集 |
| 金融機関・株主・投資家 | 融資や取引の審査、IR情報の確認 | 事業の中身、沿革、経営の方針 | 会社概要、IR情報、代表メッセージ |
| 地域・行政・報道関係者 | 取材、地域の企業の調査 | 事業の内容、地域との関わり | 会社概要、お知らせ、取り組みの紹介 |
同じ「お客様」でも、自社との関係の深さで見るものが変わります。初めて自社を知った人は「何の会社か」「自分の用件に合うか」から確かめ、長く取引している顧客は新しいサービスや連絡先を探し、しばらく取引のない顧客は「今も同じ仕事をしているか」を確かめます。閲覧者の種類と関係の深さを分けて考えると、どのページに何を書くかが決めやすくなります。
すべての閲覧者に同じ重さで応えようとすると、ページ数が増え、トップページで何を伝えたいかがぼやけます。サイトの目的に直結する閲覧者を1位にし、それ以外の閲覧者には「入口を分けて迷わせない」ことを優先します。当社が制作した上場鍛造メーカーのコーポレートサイトでは、主な閲覧者を取引先の購買・設計担当者、株主・投資家、求職者、海外の取引先と定め、グローバルナビの段階で事業紹介・IR情報・採用情報・英語版への入口を分けました。
BtoBのペルソナは担当者・上長・決裁者の3人分つくる
BtoBでは1つの発注に担当者・上長・決裁者が関わり、それぞれ確かめたいことと判断の基準が違うため、ペルソナを3人分に分けて作ります。
個人の買い物は、多くの場合、選ぶ人と払う人が同じです。BtoBでは、情報を集めて候補を絞る人、候補を比べて社内で説明する人、費用と取引のリスクを見て最終的に決める人が分かれることが多く、サイトは3人に別々の場面で読まれます。担当者が「良さそうだ」と思っても、上長が社内で説明できる材料がなかったり、決裁者が会社の信用を確かめられなかったりすると、そこで候補から外れます。
| 役割 | サイトに来る場面 | 確かめたいこと | 判断の基準 | よく見るページ |
| 担当者(現場の実務担当) | 課題が出たときに、検索やAIで候補を探す | 仕様・対応範囲、自社と似た事例、問い合わせの手間 | 自分の用件に合うか、話が通じそうか | サービス詳細、事例、よくある質問、資料ダウンロード |
| 上長(部長・課長、購買担当) | 担当者から候補を渡され、比べて社内で説明する | 他社との違い、費用の目安、進め方と期間、体制 | 比較表に書ける違いがあるか、説明資料が作れるか | 料金の目安、サービスの流れ、強み、資料 |
| 決裁者(社長・役員・工場長など) | 稟議や報告の前後に、社名で検索して確かめる | 会社の信用、継続性、責任者、トラブル時の対応 | 取引して問題がないか、任せて大丈夫か | 会社概要、代表メッセージ、実績、品質・安全・情報管理の体制 |
相手の会社の規模によっては、3つの役割を1人が兼ねることもあります。従業員10名程度の会社なら、社長が自分で検索し、比べ、決めることも珍しくありません。その場合もペルソナを1人にまとめて終わりにせず、「同じ人が、担当者・上長・決裁者の順に3つの立場で読む」と考えると、必要な情報の抜けを防げます。逆に大きな会社への発注では、情報システム部門や法務、実際に使う現場の利用者など、4人目以降が関わることもあります。まず主要な3人を作り、必要に応じて追加します。
なお、ペルソナに年齢・家族構成・趣味を細かく書く方法もありますが、BtoBのコーポレートサイトでは、役割・社内での立場・判断の基準のほうが設計に役立ちます。「休日はゴルフ」と書いても、どのページに何を載せるかは決まらないからです。
Service
コーポレートサイト制作のご相談はフェニックスデザインへナレッジベースを運営するフェニックスデザインが、今のサイトの数字を見るところから対応します。URLを入れるだけの無料簡易診断から。
ペルソナシートの項目と記入例
ペルソナシートには、会社の属性、役割と立場、発注のきっかけ、課題、確かめたいこと、判断の基準と不安、情報の集め方、社内で説明する相手、見るページ、次の行動の10項目を書きます。
| 項目 | 書く内容 | 主な情報源 |
| 会社の属性 | 業種、従業員規模、地域、取引の形 | 顧客リスト、受注の記録 |
| 役割と立場 | 部署・役職、発注の中での役割(探す・比べる・決める) | 営業の商談メモ |
| 発注のきっかけ | 何が起きたときに探し始めるか | 問い合わせフォームの内容、顧客への聞き取り |
| 抱えている課題 | 困っていること、そのままにすると起きること | 商談メモ、顧客への聞き取り |
| 確かめたいこと | 問い合わせの前に知りたい質問 | 営業がよく聞かれる質問、よくある質問の記録 |
| 判断の基準と不安 | 何を比べ、何が心配か | 受注・失注の理由 |
| 情報の集め方 | 検索する言葉、AIへの質問、展示会、紹介、業界紙 | Search Console の検索語、顧客への聞き取り |
| 社内で説明する相手 | 誰に、どんな資料で説明するか | 顧客への聞き取り、稟議で求められた資料 |
| 見るページ | サイトで読むページとその順番 | GA4 のページ別の閲覧、問い合わせ前に見られたページ |
| 次の行動 | 問い合わせ、資料請求、見積もり依頼、社名検索など | フォームの種類別の件数 |
次は、工場向けの設備保守サービスを提供する会社(従業員40名)が、取引先となる製造業の3人を想定して書いた記入例です(一般化した架空の例です)。
| 項目 | 担当者 | 上長 | 決裁者 |
| 会社の属性 | 関東の食品・部品工場(従業員100〜300名) | 同じ会社 | 同じ会社 |
| 役割と立場 | 生産技術課の主任。設備の不具合対応と保守業者の候補探しを担当 | 製造部長。保守費用の予算を持ち、業者の比較を工場長に報告する | 工場長(または社長)。年間の保守契約を決める |
| 発注のきっかけ | 今の保守業者の対応が遅く、設備の停止が月に数回起きた | 担当者から候補3社の情報が上がってきた | 製造部長から稟議が上がってきた |
| 確かめたいこと | 自社の設備(メーカー・型式)に対応できるか。緊急時に何時間で来てくれるか | 料金の決まり方、契約期間、今の業者からの切り替えの手順 | 会社の規模と継続性、事故のときの補償、責任者は誰か |
| 判断の基準と不安 | 話が通じるか。現場の事情を分かってもらえるか | 比較表に書ける違いがあるか。切り替えで生産が止まらないか | 取引して問題のない会社か。安さだけで選んでいないか |
| 情報の集め方 | 「設備名+保守+地域」で検索、AIに質問、展示会 | 担当者の資料、各社のサイト | 社名で検索、知人への確認 |
| 社内で説明する相手 | 製造部長 | 工場長 | 本社(必要な場合) |
| 見るページ | サービス詳細→対応設備一覧→事例→よくある質問 | 料金の目安→保守の流れ→強み→資料ダウンロード | 会社概要→代表メッセージ→実績 |
| 次の行動 | 資料ダウンロード、技術的な相談 | 見積もり依頼 | サイト上の行動はなく、確認だけ |
決裁者の「次の行動」が空欄に近いのは珍しくありません。決裁者はサイトから問い合わせることは少なくても、会社概要や代表メッセージで信用を確かめています。ここで情報が足りないと、担当者と上長が進めた話が最後に止まります。
BtoBペルソナの作り方:6つの手順
BtoBのペルソナは想像で書かず、営業の記録・検索のデータ・既存顧客への聞き取りから作り、営業と経営者で確かめてから使います。
- 対象を決める:どの事業の、どの種類の顧客について作るかを決めます。事業や顧客層が複数ある場合は、売上の大きい順か、今後伸ばしたい順に1つずつ作ります。
- 社内の記録を集める:問い合わせフォームの内容、営業の商談メモ、見積もり・受注・失注の記録、よく聞かれる質問を集めます。「誰から問い合わせがあり、誰が決めたか」が分かる記録が最も役に立ちます。
- 検索とサイトのデータを見る:Search Console のパフォーマンス レポートで、どんな言葉で検索されてサイトが表示されているかを確認し(Search Console ヘルプ:パフォーマンス レポート)、GA4 で問い合わせの前に見られているページを確認します。
- 既存顧客に話を聞く:最近取引を始めた顧客を中心に3〜5社に、探し始めたきっかけ、比べた会社、決め手、社内でどう説明したかを聞きます。依頼の仕方と質問の例は顧客インタビューで強みを見つける方法で紹介しています。
- 3人分のシートにまとめる:集めた情報を、担当者・上長・決裁者の役割ごとに10項目で整理します。根拠のない項目は空欄のままにし、推測で埋めません。
- 営業と経営者で確かめ、見直す時期を決める:営業担当に「実際の顧客と合っているか」を確かめてもらい、経営者と「この3人に向けてサイトを作る」と合意します。事業や顧客層は変わっていくため、半年〜1年に1回見直します。
作るときにつまずきやすい点と直し方は、次のとおりです。
| よくある失敗 | 起きること | 直し方 |
| 理想の顧客像を書く | 実際の問い合わせと合わず、原稿が空回りする | 受注の記録と顧客への聞き取りから作る |
| 担当者1人分だけ作る | 上長や決裁者が確かめたい情報(費用の目安、会社の信用)が抜ける | 役割ごとに3人分作る |
| 年齢や趣味ばかり詳しい | ページの構成や原稿の判断に使えない | 役割・確かめたいこと・判断の基準を中心に書く |
| 作ったまま共有しない | 制作会社・営業・経営者で想定する相手がずれる | 設計書に入れ、制作の打ち合わせのたびに参照する |
ペルソナをコーポレートサイトの設計に使う方法
ペルソナは、3人それぞれの「確かめたいこと」をページと段落に割り当て、それぞれに次の行動を用意するために使います。
ペルソナシートの「確かめたいこと」の行を1つずつ取り出し、答えるページを決めていきます。1つの質問に答えるページが2つあると読む人が迷い、1つもなければその人は候補から外します。
| 誰のためか | サイトで用意するもの | 書き方の例 |
| 担当者 | 対応範囲・仕様の一覧、自社と似た事例、問い合わせから対応までの流れ | 対応設備のメーカー・型式を一覧で載せる。事例は業種・設備・課題・対応の順で書く |
| 上長 | 料金の決まり方と目安、進め方と期間、他社との違い、社内説明に使える資料 | 料金が何で決まるかと目安を書く。サービス資料をPDFでダウンロードできるようにする |
| 決裁者 | 会社概要、代表メッセージ、取引実績、品質・安全・情報管理の体制 | 会社概要に設立・資本金・所在地・許認可を正確に書く。代表メッセージで事業の方針と責任の所在を示す |
3人の行動の違いは、導線にも反映します。担当者は「まだ問い合わせるほどではないが、資料はほしい」段階にいることが多いため、資料ダウンロードや技術的な相談の入口を用意します。上長には見積もり依頼への入口を、決裁者には会社概要までの短い道のりを用意します。当社が制作した不動産会社向けの営業支援サービスのサイトでは、導入を決める経営者や営業責任者が「機能→強み→利用企業の声→よくある質問」の順に確かめることから、その順番をそのままグローバルナビにし、機能一覧とお客様インタビューの各ページの末尾に「資料請求」と「デモを依頼する」の2つのボタンを置きました。すぐに話を聞きたい人と、資料を持ち帰って社内で検討したい人の両方に応えるためです。
原稿を書くときも、ページごとに「誰が読むか」を決めておくと、言葉づかいを選びやすくなります。担当者向けのページでは仕様や手順を具体的に、上長向けのページでは比べられる数字と進め方を、決裁者向けのページでは方針と体制を簡潔に書きます。BtoBサイトに必要なページと載せる情報の全体像は、BtoBサイト制作のポイントでまとめています。
閲覧者ごとに書き分けても、会社の約束は1つにそろえる
閲覧者ごとにページや言葉を書き分けても、「誰に、何を理由に選ばれる会社か」という中心の約束は、すべてのページで同じにそろえます。
営業向けのページでは「短納期」を強調し、採用ページでは「残業の少ない働き方」を、代表メッセージでは「持続可能なものづくり」を掲げる。それぞれは正しくても、読み比べた人に食い違いが見えると、会社全体の言葉が信用されなくなります。担当者・上長・決裁者が同じサイトの別のページを読み、社内で話を突き合わせるBtoBでは、この食い違いが判断を止める原因になります。トップが掲げる方針と、営業や現場の実際の対応が違っていれば、なおさらです。
対策は、ペルソナを作るのと同じ時期に「当社は、誰に、何を理由に選ばれるか」を1文で決め、すべてのページをそこから書くことです。閲覧者ごとに変えるのは、その約束のどの面を、どの言葉で、どの順番で見せるかだけです。当社では、ヒアリングで伺った事業の強みと顧客が選ぶ理由を、コンセプト・トーン&マナー・キャッチコピー・求める顧客像とあわせてブランディング設計書にまとめ、ページごとの原稿の判断基準にしています。
よくあるご質問
ペルソナとターゲットは何が違いますか?
ターゲットは「従業員100〜300名の製造業」のように属性でくくった集団、ペルソナはその中の典型的な1人を、役割や判断の基準まで具体的にした人物像です。ターゲットで「誰に向けるか」を決め、ペルソナで「その人が何を確かめ、どう決めるか」を具体的にします。
決裁者が社長1人の小さな会社が相手でも、3人分必要ですか?
人数は1人でも、立場は3つあると考えて作ります。同じ社長が、最初は担当者として用件に合うかを確かめ、次に候補を比べ、最後に信用を確かめて決めます。3つの立場で確かめたいことを書き出し、1つのシートにまとめれば十分です。
アクセス解析のデータだけでペルソナは作れますか?
データだけでは作れません。GA4 や Search Console からは、検索された言葉や見られているページは分かりますが、閲覧者の役職や社内での決め方は分かりません。データは「何を確かめに来ているか」の手がかりとして使い、役割や判断の基準は、営業の記録と既存顧客への聞き取りで補います。
ペルソナはいくつ作ればよいですか?
主要な事業・顧客層ごとに、担当者・上長・決裁者の3人分が基本です。事業が3つあり顧客層が違えば9人分になりますが、最初から全部そろえる必要はありません。売上の大きい事業や今後伸ばしたい事業から作り、サイトの設計に使いながら増やします。
制作会社に頼むと、ペルソナも作ってもらえますか?
制作会社によって範囲が違うため、見積もりの段階で確認します。当社では、ブランディング設計の工程で「求める顧客像」を設計書にまとめるほか、ブランディングプラン(200万円〜・税別)ではブランドワークショップ・競合調査・ペルソナ設計を行います。どの場合も、ヒアリングとヒアリングシートを通じて、営業の現場で聞かれることや顧客が選ぶ理由を伺います。
まとめ
コーポレートサイトは確かめたいことの違う多くの人に読まれ、BtoBではさらに1つの発注に担当者・上長・決裁者が関わるため、閲覧者と役割を分けてペルソナを作ることが要点です。
- 閲覧者の種類と関係の深さを分け、サイトの目的に直結する閲覧者を1位にする
- BtoBのペルソナは担当者・上長・決裁者の3人分を、役割・確かめたいこと・判断の基準・見るページで作る
- 年齢や趣味より、社内での立場と判断の基準を具体的に書く
- 営業の記録・検索のデータ・既存顧客への聞き取りから作り、営業と経営者で確かめる
- 3人の「確かめたいこと」をページに割り当て、それぞれに次の行動を用意する
- 書き分けても、会社の中心の約束は1つにそろえる
当社のコーポレートサイト制作では、ヒアリングで閲覧者と選ばれる理由を整理し、求める顧客像を含む設計書に合意してから構成とデザインに進みます。進め方とプランはコーポレートサイト制作のページでご覧いただけます。
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